そらマメさん鉄道局・流通局

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絶対に避けて通れないJR九州の廃線問題 ●

response.jpfuwafuwaame.hatenablog.com↑の記事も参照。

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JR九州が公開している被災状況(7月13日現在)。
写真にないだけで、他にも目に見えない災害が起きている可能性もある。

 人吉球磨での集中豪雨による被害が続々と判明する一方で、昨日は長崎・佐賀・福岡県内でも集中豪雨が発生。筑後川が間接的に越水するなど、大問題になった。

 JR九州管内において、現段階で判明している被災による運休区間をまとめると、

 特に久大本線肥薩線は、長期運休が懸念される。前者の久大本線に関しては、2017年の九州北部豪雨において回復したばかりなのに、再び橋梁が筑後川水系の大増水によって破壊。肥薩線に関しては、特に球磨川と並走する八代~人吉間の橋梁や線路・駅舎などが大きく破損していることに加え、第3セクター会社として国鉄戦力外を免れたくま川鉄道も、自力での回復が不可能になるくらいの損傷であることが判明しているため、もはやJR九州だけでは到底太刀打ち出来ない。

 今は強力な梅雨前線が通り過ぎるのを待つしか無く、取りあえず道路の災害復旧とガレキの片付け清掃、そして生活インフラの早期回復を図ることが最優先だが、生活インフラがある程度回復した後は、接続する他社線も含め、JR九州管内の存続問題が必ず出てくる。

 久大本線肥薩線(+他社線)も自動車輸送への世代交代が起こった場所であり、該当する区間の交通に関しても、一般的には高速バスなどで都市間を行き来している。ただ、前者の場合は天ヶ瀬・由布院温泉といった観光地への利用目的で需要がある他に、起点の久留米~日田と終点の向之原~大分までは都市内輸送としての役割が強く、全廃するのは難しい。

 一方、後者の場合は一足先に廃線になった旧・三江線の事例と同様、「遠回りする割には(観光列車を除いて)基本的に客が居ない」という弱点をはらんでいるため、JR九州としては災害を理由に戦力外通告とする公算が大きくなっている。

 今後想定される話としては、

  1. 多発する災害に対応できず、加えて輸送密度や営業収益とのバランスを天秤にかけても全く看過できない。そのため、久大本線は一部区間肥薩線はほぼ全線を廃止とする方向で調整。
  2. 久大本線はJR久留米~日田駅と、向之原駅大分駅鉄道路線として存続。由布院~向之原はBRTバス専用道に転換し、残る日田~由布院は高速バスに転換する形で廃止。
  3. 肥薩線は被災した距離があまりにも長すぎるため、自治体の協力なしでは復旧不能熊本県としては、人吉駅で繋がる他社線にも配慮しないといけない)。そのため、熊本県も拒否する可能性が大きく、仮に自治体主導で復帰したとしても、再び、巨大な水害が発生した場合には太刀打ち出来ない。こうしたことから、「くま川鉄道の八代延伸(JR九州撤退)」も自治体全額出資による肥薩線回復も、ほぼ絶望。
  4. 学校への通学用途で使用されるくま川鉄道は、BRTバス専用道に転換させた上で早期回復を実現(事実上、鉄道戦力外)。

 このようになると見込んでいる。残念ながら、久大本線大分県が公的負担を出すのならば回復の余地があるものの、肥薩線は被災している距離があまりにも長すぎるため、有無を問わずに廃止(BRTでの復活も難しい)とする方向で話が進んでいくと思う。一介の会社に何でも回復を求めさせるのは、あまりにも酷な話である

 昨年末に「かわせみ号に乗ってみたい」という目標を掲げていたが、その目標も木っ端微塵に破壊。もう諦めるしかない。

 不謹慎な発言になるが、本気でJRが廃線を通告してくる場合、こうした激甚災害による理由付けが必要になるのを見ていると、日本の鉄道は地域輸送よりも自分のムラのシンボルという束縛から抜けきれないんだなとつくづく感じる。アシの確保は、何も鉄道にこだわった話じゃないのに……。