www.westjr.co.jp 以前からもアナウンスされていた通り、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴い、JR西日本をはじめとした鉄道会社の経営が急速に悪化している。そのため、主にデータイムや閑散線区を中心に来季のダイヤ改正を待たずに、一部を先行して10月2日から実施する。
ダイヤ見直しの特徴
近畿エリア(アーバンネットワーク)
JR西日本の幹線である東海道本線・山陽本線(琵琶湖線・JR京都線・JR神戸線)のうち、一部の新快速・快速・普通列車の本数を削減。と言っても、アーバンネットワークの末端部で微々たる影響を受ける程度。
- [A] 琵琶湖線・長浜~米原:10時~15時台の新快速を、1時間1本に削減。
- [A] JR京都線・京都~高槻:10時~13時台と、15時台の普通列車を土日祝日に限り、1時間8本から4本に削減。
- [A] JR神戸線・須磨~西明石:10時~11時台の普通列車を土日祝日に限り、1時間8本から4本に削減。
- [A] 山陽本線・姫路~上郡:10時~15時台に運行される新快速(姫路より西側は普通列車)の本数を、網干を軸にそれぞれ1本ずつ削減。
- [A'] 赤穂線・相生~播州赤穂:10時~14時台に運行される新快速(姫路より西側は普通列車)の本数を、1時間2本から1本に削減。
- [Q] 大和路線・奈良~加茂:11時~15時台に運行される大和路快速の本数を、木津を軸にそれぞれ1本ずつ削減。
近畿以外のエリア
近畿エリア(アーバンネットワーク)以外では、閑散とした線区の更なる運行本数削減がメインとなっている。コロナを機に戦力外通告が懸念されている小浜線・越美北線・芸備線は、運行本数を減らしたり最終列車を大きく繰り上げる程度に留まったが、油断できない。
【北陸】
- 小浜線は小浜~敦賀の平日・土日祝日ダイヤを共通化した上で、現状の28~30本を24本に削減。東舞鶴~小浜は26本→22本。
- 越美北線は福井~越前大野が18本→15本。戦力外通告の懸念が極めて高い越前大野~九頭竜湖は現状9本で維持。
- 城端線をワンマン運転にきりかえ(但し、車掌が乗車するため、実際には運転士も含めて2人~対応)。
- 発車時刻・車両数の見直し。
【和歌山・南紀】
【北近畿】
【岡山・福山】
- 山陽本線を通る快速サンライナー・普通列車の一部運転を取りやめ。これに伴い、岡山~倉敷の最終列車は、23時37分発・備中高梁行き列車となる。
- 瀬戸大橋線の下り23時3分発を取りやめる。
- 津山線は上下線それぞれ1日2本の運転取りやめ。
- 桃太郎線は上下線それぞれ、9時台の運行を取りやめ。
- 福塩線は下り2本・上り1本の運行を取りやめ。
- 因美線も上下線それぞれ1本取りやめ。
- 津山線・姫新線・因美線・芸備線、それぞれ発車時刻の変更あり。
【山陰】
- 山陰本線の運行本数を見直し、データイムと夜行列車の本数を削減。
- 伯備線・米子22時29分発列車を取りやめ。
- 因美線・鳥取22時18分発列車を取りやめ。
- 境線の22時台列車を取りやめ。
- ↑の見直しに伴い、最終列車の繰り上げ・運行区間の変更にも言及。
- 一部の快速列車における停車駅を拡大。実質「普通列車」降格。
【広島・山口】
新幹線回数券の全廃
ダイヤ見直しとは異なるが、山陽新幹線に設定されていた回数券を、2022年3月31日までに段階的に廃止する。
詳細はJR西日本の公式サイトで確認を。完全廃止の理由は、建前上はe5489やチケットレスサービスの拡大が主たる理由だが、実際には金券ショップ潰しという見方が強い。
どんなにe5489などのネット予約サービスや窓口撤廃が進んでも、回数券を束にして金券屋に流れると、正規運賃または本来の割引率に合わせた回数券よりも大きく値崩れして叩き売りされてしまい、大損が懸念される鉄道会社としては看過できなかった。
www.asahi.com JR東海ではEX予約会員になってもらうことを前提に、金券ショップ並みの割引率で発売したり、子会社の旅行代理店が企画する「ぷらっとこだま」の積極的発売などで、徐々に金券屋の勢いを落していった。JR西日本も「昼得きっぷ」を取りやめる代わりに、ICOCAポイントとして実質還元するサービスに切り替えたことから、回数券制度の廃止は時間の問題であったと言える。
なお、在来線の一部列車における回数券は、執筆段階でも残ってはいるものの、これもそう遠くないうちに廃止・ICOCAポイント還元方式に切り替わる見通し。また、博多・小倉で接続するJR九州の名物「2枚きっぷ」も、西九州新幹線の開業を見越して廃止される公算が高まっている。
JR西日本の「おやくそく」
今後はトクトクきっぷも電子化へ
JR西日本は「MaaS」(複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービス)の導入を積極的に進めており、たとえば瀬戸内海エリアでは「setowa」と呼ばれるアプリでJR線+他社線+公共交通機関の利用+観光施設の電子クーポン発行をトータルで行うサービスを実施している。
複合的な公共交通機関の利用と、それに伴う地域振興策の一環として登場したものだが、setowaアプリには、2人縛りの規制がないソロ向けデジタル乗車券が発売されている。
現段階ではあくまでも試行錯誤に過ぎないが、将来的には磁気券方式でのトクトクきっぷは廃止し、全てデジタルアプリ+他の公共交通機関との連動を踏まえたサービスへ転換していく方針。現に、京阪神地区では「WESTER」と呼ばれるアシストアプリもリリースされており、「関西1dayパス」の磁気券発売取りやめを見越している。
ダイヤ見直しは10月2日から!
元々、3月のダイヤ大幅見直しで大きく本数が減らされているため、在来線経由で山口支社から脱出するのが困難になった。それもあるため、最近は自家用車で移動することが多い。
10月2日の見直しは来年3月に予定されている「大ナタ振り」の前哨戦にすぎず、COVID19の流行が今後も続くことから、想像も付かないほどの移動制限が課せられるだろう。今は噂話程度の不採算線区の戦力外通告も、来季のダイヤ改正前から議論が本格化するかもしれない。