そらマメさん鉄道局・流通局

鉄道旅行・新聞の流通考察・雑談がメイン。

いかにして極端な値上げを回避するか

facta.co.jp 月刊ファクタの新聞売り上げ話は、新聞配達をしている身からして特に目新しいと思う記事は殆ど無いのだが、2月号の中では、製紙会社からの原価値上げ分を今春から導入する可能性、という話が出ている。

 新聞紙のもととなるパルプが、ロシア・ウクライナ戦争による石油価格の上昇や、それに伴う世界経済の不安定情勢により、極端な円安の進行などから価格転換が進まず、上昇分を新聞社に求めていることから、信憑性は高いだろう。とはいえ、新聞社側も3~4年前に段階的に購読料見直し・ページ数削減で節約してきただけあり、ココで製紙会社が求める価格上昇分(約3~4割)をストレートに反映していいものなのか、苦悩の判断を迫られることになる。

考えられるシナリオ

1) 夕刊・不採算銘柄を廃刊・見直し

 セット体制を維持している都心部では、購読者層の減少や配達に掛かるコストや人員不足に配慮し、いっそのこと夕刊を完全に廃止して朝刊単独紙にしてしまうという案。紙代を3~4割引き上げるとなった場合、真っ先にコスト削減に矢が向くのは、夕刊だろう

 ただ、これはセット体制を維持している地域の話であり、朝刊単独で流通している地方部の場合は価格転換を回避できない。大規模な再編を行ったとしても、せいぜい今の28~30pが18~16pに減少する程度で、それでも尚、直接的な値上げを要求する形になる。

 プリントコストの増加を極端に嫌がったため、不採算となる銘柄を早々と見直したものとして考えられるのが、静岡新聞の夕刊廃止、西日本スポーツの廃刊(完全電子化)かなとみている。

2) 紙面構成の大規模再編

 1)と重複する話で、ページ数を大胆に削減してしまうというもの。

 ただ単にページ数を削るのではなく、紙面よりも電子化した方がよいと判断されるニュース(こちら110番 / 119番モノ・生活面・スポーツ面・経済面・株価面・国際面・書評欄・テレビ番組表・ラジオ番組表など)は新聞社の電子版コーナーに移設する形で廃止し、残った総合面・社会面・政治面・地域欄のみ、紙面に掲載した上でオピニオンを大幅に拡充(といっても、今より1~2p増える程度)する案。

 いわゆる、産経新聞にみられる「ニュースよりもオピニオン」を地方紙・全国紙レベルで完全に導入し、毎日届くオピニオン雑誌のような立ち回りに変えていく手法である。

 ページ数は大幅に削減できる効果はあるものの、それでも尚、直接購読料の見直しを社告を通じて説明する必要があり、昨日のニュースを伝えることを半ば放棄したメディアに付加価値を見出せるかは疑問。

3) 直接値上げを求める

 製紙会社からの原価上昇分を、そのまま値上げしてしまうというもの。この場合、3~4割の上昇なので、単純に計算すると

  • セット体制(一般紙の一例):4,400円 → 5,700円~6,200円前後
  • セット体制(日経):4,900円 → 6,400円~6,900円前後
  • 朝刊単独(一般紙の一例):3,500円 → 4,600円~5,000円前後
  • スポーツ紙月極契約:3,353円 → 4,400円~4,900円前後
  • 1部売り朝刊:150円 → 200円~210円
  • 1部売り夕刊:50円 → 70円~80円

 このように見積もる。

 ご高齢の方や熱心な社会活動家の人たち、ジャーナリストや文芸作家の方々など、紙媒体の紙面を強く求める読者層からしたら「しょうがないね、ガハハ」となるだろうが、一般的な家庭にしたら激怒→解約ラッシュになるのは避けられない。3~4年前の段階的見直しの時は、月極め最大300円程度の上昇で回避できたため、さほど混乱は起きなかったが、今回はかなり厳しい。

1~3の案をミックスさせて、極端な値上げを回避するのが現実的

 以上のことから、何としてでも「3」の直接値上げは出来るだけ回避するべきだろう。となると紙面再編を余儀なくされるが、値上げ幅を以前と同じ300円台で納めるには、

  • 夕刊・不採算銘柄の廃止
  • 一部の紙面は完全に電子版に移行させる
  • オピニオン面を大幅に拡充させ、取材に掛かるコストを出来るだけ抑える。
  • 朝刊のページ数を現在の平均28p前後から18~16pまで削減。
  • それを踏まえて、直接値上げに掛かる負担を300円上昇の範囲で抑制。

 ここまで行わなければ、読者としては納得がいかない。