「電子版を通じて魅力あるジャーナリズムを求めていく」
といった記者達の妄想は別として、タイトルにもある通りに差し迫る報道体制の抜本的見直しを考えるならば、どうあるべきか。幾つかあるものの、「短期的に行うべきこと」と「中長期的に行うこと」で振り分けて考える。
短期的に行うこと
- 取材範囲の縮小化
全国紙の場合は不採算地域の取材体制を縮小し、総局から支局・通信部・駐在級に格下げ。ブロック紙であれば共同通信・時事通信への委任も視野に行動する。- 配布エリアの縮小化
毎日新聞・産経新聞が富山エリアから配布を撤退したことから、不採算地域における配布そのものを取りやめ、ごく少数の読者に対しては郵便での遅れ配布を推奨する仕組みに切り替える。- 購読料の値上げ
取材体制縮小化に伴うコスト削減効果に加え、配達環境悪化への対応や、輪転機製造・新聞用紙製造の廃止・合理化、配送業務に対する確実な供給体制を今後も堅持することを前提に、購読料を更に値上げする(現在の20~30%以上を想定)。値上げと共に販売店へのロイヤリティー徴収も見直し、販売店側が有利になるように改善を提案する。- リソースを絞った紙面編集
「朝刊は12ページ以内・夕刊は4ページで完結」をスローガンに、日本の報道屋が得意とする「事実よりもオピニオン・政治的アジェンダ・権力監視のための議論」に完全転換。一部コーナーの削減・廃止を前提に、社会面・政治面とオピニオンのみで構成した紙面にする。
※経済面・株価欄・スポーツ面・生活面・文化面等は廃止。地域欄は社会面と統合する形で大幅削減。地方紙の場合は共同通信によるコラムを大幅増強し、事実上、地方紙としての役目を見直す。
その上で、中長期的なアクションを考えるなら、私は幾つかのシナリオがあるとみている。
中長期的に行うこと
共同通信が紙面を作る
正確に言えば、共同通信社の加盟社となっている財力の無い地方紙が、報道・調査部署としての共同通信社の記者に鞍替え(転職)し、共同通信の業務を受託する形で現役の共同記者と共に取材を行う。そして、紙面編集も全て共同通信がプロットを製作し、全国同一の紙面を各地方紙に送ることで、紙面の共通化を図る。表題こそ地方紙の名称だが、中身は全て共同の記事で構成されることになる。
地方紙は共同の紙面印刷の仕事を受託するという立ち回りに縮小されるため、単に発行所さえ残せればそれでOK、というスタンス。
- メリット:
・取材記者の再就職あっせん
・共同特有の広範囲取材に、地方紙ならではの狭域取材を一斉に行うため、効率化が図れる
・地方紙は「共同の業務委託」という位置づけに変わるため、地方紙直営記者を配属させる必要性が薄れ、コスト削減効果が芽生える。
・地方紙が廃刊になる訳ではないので、一応、新聞社のブランドは維持できる。(共同)- 難点:
・共同通信の報道姿勢を嫌う地方紙からは拒絶反応を起こされる。
・何より、地方紙としての体を成さないため、共同推しの記者でさえも拒絶される恐れ。
・「全部共同にアウトソース」なので、やはり実質廃刊と疑われる恐れも。(共同)
実現可能性は、★5つに対して★3つ。「共同通信の報道体制には賛同しても、何だか乗っ取られた感しかしない」と思う新聞社が出てきてもおかしくない。一方で、主義主張を省いたとしても、通信社の記事で埋め尽くし、とにかくブランドとしての新聞社維持・配布・売り捌きさえ行えれば……と考えるのであれば、手段としては十分あり得る。(共同)
報道・調査部署の完全委託化・プロダクション化
先程の共同へ配属転換に似ているが、どの新聞社も部署の切り離し・再編などで分社化・委託化を推し進めている。編集記者のお家騒動が出た徳島新聞社や、それを「労組を守れ!言論のうんちゃら」と言って全面擁護した朝日新聞社も、何だかんだで分社化・委託化を段階的に実施している。
fuwafuwaame.hatenablog.com これを更に進めて、聖域(?)とも言える報道・調査部署(取材)にまで分社化・委託化を進めるというもの。
取材記者はその新聞社の直営社員という位置づけから、報道・調査業務を受託する個人事業主という立ち回りに変え、報道・調査業務を統括会社、または本社直営とプロダクション契約を結ぶ。年間契約で高い報酬が得られる代わりに、誤報を犯したら契約解除という重いペナルティを科せられるだけでなく、最長契約も数年までという形にして、取材記者の新陳代謝が進むようにする。
実現可能性は★2つ。まず、前例主義の日本の報道屋が、そんな記者の生命線を切ってまでアウトソース化することは考えにくい。百歩譲って実現するにも、労組側の武力行使は回避できず、結局、面倒くさくなって共倒れする。
異なる分野の企業がスポンサーとなる
現在の新聞社の経営は、基本的には元記者か、同族オーナー方式を採用しているものの、どうしても経営が困難になった場合には、全く畑違いの企業が支援に乗り出して、その法人のグループ会社に再編させるというもの。
「何言ってるんだ、そんなことをしたら報道の自由が奪われるじゃないか!」とスグに拒絶反応を起こす記者やジャーナリストもいるだろう。この事例で分かりやすいのは、鳥取県にある新日本海新聞社かなとみてる。
新日本海新聞社が発行する日本海新聞は、元々は異なる山陰の地方紙どうしが集まって旧・日本海新聞社が発足するも、1975年に一度倒産している。しかし、他県からの侵略を恐れた地元民が復刊運動を行った結果、全く畑違いの紳士服メーカーの企業が名乗りを上げ、新日本海新聞社として再出発した経緯がある。
「畑違いではあるものの、ちゃんと県紙として機能しているあたり、経営と取材は別として考えるべき」と考えるなら、報道・調査部署を本社直営から切り離し、その業務を全く異なる業種の大手企業や財界が引き受けるというのも、十分あり得る。
- メリット:
財力が桁外れに違う畑違いの企業の傘下に入ることで、安定した取材・紙面製作が行えるようになり、特に地方紙の場合は倒産で県紙が消えてしまうリスクが減る。- 難点:
「親会社が報道にちょっかいを出す」という不安は拭えない(これが原因で記者や労組が猛反発する恐れ)。
実現可能性は★3つ。安定した経営のもとで新聞が発行したいのであれば、多少は目をつむってでも受け入れる覚悟は必要。
このほかにも、「自分らが取材しやすい分野に敢えて的を絞り、徹底したオピニオン雑誌路線に転換」「そのノリでそのまま宗教紙に転換」といったものも考えたが、いずれも「無くは無い」。
声高にジャーナリズムの重要性を語るのは結構だが、それを支える基盤が揺らいでいる以上、どこかで現実を見なければならないのは確か。自分は離職しても配送業者としての可能性があると思っているけど、取材記者はどうなるんでしょうかねぇ。