そらマメさん鉄道局・流通局

鉄道旅行・新聞の流通考察・雑談がメイン。

秋の新聞週間(2) 今では殆ど見かけない特ダネ挿入

 9月14日付の読売新聞(西部本社管内)では、一面の内容が福岡県・山口県西部(下関・長門エリア、13版)と、それ以外の地域(12版)で、微妙に構成が異なっている。例の宗教団体に対する解散請求を政府主導で行うかどうかの話で、決定が曖昧だった12版と異なり、13版では来月にも実施する方向で調整を進めたという内容が強調されている。

霊夢「ん?同じ日の新聞なのに、12版と13版でレイアウトが違うわね?」
魔理沙「宗教団体に対する、政府主体での解散請求話を表に持ってきたんだぜ」

 なぜ12と13(更には最終版の14)でこんなに紙面が違うのかというと、紙媒体の新聞は遠方に輸送する必要があることから、締切時間を地域別に分けている。一番早めに締切→印刷を行った新聞は「早版」、次に遅い新聞は「遅版」、最終締切で打ち切って印刷に回したモノは「最終版」などとも呼ばれる

 今みたいに電子版が普及する前は、この時間差を狙って遠方に送る新聞は取りあえず第一報程度に留めておき、最終版でワザと特ダネを挿入して他紙に追い越されないようにする、という技術が見られた。そのため、朝のニュース番組で今朝の朝刊を取り上げる時は、自分が購読している新聞の構成と違っていて「?」となる読者もいたぐらいである。

 こうした一面特ダネを最近見かけないのは、単に電子版が普及しただけではない。朝日新聞毎日新聞などは購読者数の減少から、年々発行部数や販売店を減らしており、それに伴って別の販売店に委託する傾向にある。自前でやっていた頃であれば、販売店は親会社の新聞印刷時間に合わせて動けばいいため、常に最新の状態で配達に出かけることが出来たが、委託となった場合は、委託先の新聞社の方針に沿って輸送しなければならない

 その結果、委託先の販売店に迷惑を被らせてはいけないことから、今まで以上に印刷時間を切り上げたり、前述の締切時間切り分けを無くして1回刷りにしたり、速報性を伴うニュースの掲載を見直してオピニオン主体の新聞にしたりしている

 「電子版で供給してますから……」とは理に適う話のようにも見えるが、読者の大半が高齢者である以上、複雑な操作を求められる電子版が普及するとは思えず、結果として速報性を犠牲にしてでもオピニオン面を拡充せねばならず、面白味が減っていく悪循環に陥っている。

 ある意味、新聞社と販売店は、売りさばきの面でギクシャクすることはあっても、基本的には一心同体とも言える。もちろん委託化も新聞の存続を賭けた合理策の一つなので、それはそれで理に適う。その反面、紙媒体ならではの面白味や取材力も低下してしまうため、読売新聞も部数減に悩まされているとはいえ、他紙ほど困らない程度に現状維持が出来ているのを見ると、やはり強い。