そらマメさん鉄道局・流通局

鉄道旅行・新聞の流通考察・雑談がメイン。

鹿児島県内の新聞流通考察(ドキッ!丸ごと南日!! みなみだらけの新聞販売)

 鹿児島県内の新聞流通話。……何年ぶりなんだか、この企画。

かごんまの新聞

版立て

かごんまの取材拠点

南日本新聞
南海日日新聞
  • 本社:〒894-8601
    鹿児島県奄美市名瀬長浜町10-3
  • 総局:鹿児島・徳之島・沖永良部
  • 東京本社 ……時事通信本社のビルに入居。
奄美新聞社
  • 本社:〒894-0026
    鹿児島県奄美市名瀬港町16-11
  • 支社:徳之島・沖永良部・鹿児島・東京
読売新聞西部本社
朝日新聞西部本社
毎日新聞西部本社
その他
  • 産経新聞大阪本社・西部支社:ごく僅かに出回ってはいるが、取材拠点はなし。かつては南九州支局が鹿県の取材を行っていたことがある。
  • 西日本新聞・鹿児島支局:2018年3月末で鹿児島・宮崎向けの西日本新聞は廃刊。但し、取材拠点そのものは総局から支局に降格した上で現存。鹿県内の取材は共同通信の記事を借りるため、西日本新聞による自社取材は皆無。
  • 日本経済新聞西部支社:鹿県内に独自の取材拠点はなし。

南日本新聞

南日本新聞(通称「なんにち」)

 南日本新聞は、鹿児島県(以下「鹿県」)で流通している県紙。愛称は「南日(なんにち)」、あるいは「みなみ」。発行部数は約20万部相当で、他の全国紙を抜いてダントツ1位である。一つの県紙で20万部近くも供給されているのはわりかし普通だが、鹿県の人口に対して考慮すると、比較的多い。これは離島群の薩南諸島を含め、鹿県が九州本土から沖縄本島間際まで入れて、非常に広範囲に供給していることが要因の一つになっている。

 取材範囲は鹿県全域で、前述の離島の薩南諸島や、宮崎県の一部(都城・日南・串間などの諸県地域)をも含んでいる。諸県地域は明治初期の鹿県との紛争を含め、元々は島津藩の領地だったことから、その名残で鹿県に接する宮崎県内でも、僅かながら読者層が存在している模様(但し、宮崎県内は都城市内であっても南日を即売している所はなく、宮日販売店等からの持ち込みで対処)。対称的に、薩南諸島では九州本土から空輸で運ぶという弱点から、そちらでは地域紙が牛耳っており、南日の介入は限定的。

 創刊は1881(明治14)年。その後、1889(明治22)年に、革新勢力の政党が経営権を握り、それに対抗すべく、1913(大正2)年に地元財界が中心となって鹿児島実業新聞社」が発足。1942(昭和17)年の一県一紙体制で2つの新聞が無理やり合体させられて「鹿児島日報」となり、戦後の1946(昭和21)年に現在の南日本新聞となって現在に至る。

ドキッ! 丸ごと南日!! みなみだらけの新聞販売!!

南日+読売・朝日・日経+スポーツ4紙が並んだ店。これはまだいい方。

霊夢「南日・毎日・日経、それに東スポがあるだけ?」
魔理沙「なんだ、この歪な組み合わせは」

霊夢「南日だけってのは地方あるあるだけど、スポーツ紙、なんで中途半端にニッカンが無いのよ(笑)」

魔理沙「こっちは南日と朝日が山ほど入荷されてるぜ」
霊夢「私が好きな読売が無いなんて……」

 鹿県のコンビニ卸しの特徴として、南日はともかく、他の全国紙・スポーツ紙は全銘柄揃うことは殆ど無く、最低限南日のみ、よくて南日+別銘柄が1つ+スポーツ紙が中途半端に2~3銘柄といった、謎の組み合わせで売られていることが多い。これは南日が圧倒的シェアを誇るが故に、他紙の介入が難しく、即売でも南日を愛読する読者が過半数を占めることから、必然的に販売店の裁量で持ち込みを自主判断している所が大きい。

 あまりにもバラツキが酷いため、鹿県にドライブに出かけた際に読売・朝日・日経を調達しようとするのが非常に大変で、南九州ファミリーマート・ローソン南九州の店舗に片っ端から当たって、ようやくあるかないかという苦労を強いられる県といえる。これはJR九州に併設された南九州ファミリーマート鹿児島市街でも同様である。

 南日の前身・鹿児島実業新聞社の設立に、朝日新聞大阪本社の前身・大阪朝日新聞社が大きく関与した経緯もあり、2010年4月から鹿児島・宮崎向けの朝日新聞を南日の印刷工場で委託印刷している。そのため、コンビニとかでは「南日の隣に朝日ならある」という事例がまま見受けられるものの、コンビニ卸しは販売店の裁量に委ねている部分があるため、必ずしも朝日新聞(をはじめとした、南日以外の他紙)が即売されるとは限らない。

「南日は余裕でも、他紙は完全に運まかせ」と心得よ。

地域欄

南日の地域欄

 南日の地域欄は、ニュースとなる部分が3ページ、伝言板や公共機関の予約状況などをまとめたコーナーが1~2ページで、実質4~5ページ体制。県域総合の話は社会面を使用している。共同通信の加盟社であるため、自社より共同の記事が全体の8割以上も占めているが、これは他県同様である。

注目すべき点

ボールド文字

2024年1月13日付より引用

 南日の紙面の特徴として、記事本文がやや太文字になっている。競合紙の読売新聞・朝日新聞や、他の県紙と比較しても、ごく僅かだが太く・濃く印刷されている様子が窺える。また、使用しているフォントも視認性を重視したものが使われ、年配者でも比較的可読しやすいように考慮。

桜島の風向き

鹿児島市民にしたら、この情報は死活問題。

 南日本社がある鹿児島市内は、海を隔てて活火山の桜島があり、非常に高い頻度で噴煙が巻き上がる。そのため、風向き次第で火山灰が各地に飛んでいくことから、南日の一面にある天気予報には、発行日の桜島風向き予報がやや大きめに掲載されている。これは読売新聞・朝日新聞の鹿児島版でも、地域欄に普通に載っている。

 なお、鹿児島県内のテレビ・ラジオ番組では、天気予報ついでに「桜島の風向き情報」がセットで流れるため、この情報なしではマトモに桜島と付き合うことが出来ない、重要なページと言える。

以前は夕刊も刷ってた

 2009年2月末までは南九州では珍しく夕刊を発行していたが、時代の変化で割に合わないと判断され、翌3月1日付から現在の朝刊単独に切り替わっている。

全国紙

毎日新聞は「南九州総合」となり、熊本・宮崎と一緒くたにされている。

 圧倒的シェアを誇る南日の土地柄であるため、全国紙の出番は大幅に限られている。読売新聞・朝日新聞は地域情報1ページ+九州総合、毎日新聞は紙面見直しで鹿児島を含めた南九州3県が一緒くたにされていることから、ほぼ鹿県の情報は載らず、夕刊の再掲載がメインとなっている。

テレビ番組表

鹿県の番組表

 第1テレビ欄に掲載されている並び順は、NHK鹿児島放送局が最も左に位置し、それ以外は新聞社と接点の深い民放が優先的に左側に来るように配備。

 南日と接点の深い放送局は、TBS系列のMBC南日本放送。このほかにも、フジテレビ系列局のKTS鹿児島テレビもたくさん出資しているとのこと。MBCラジオ・テレビでは、南日の記事を借りたニュース番組が流れる。

明日の番組表

薩南諸島への配慮

 第2テレビ・ラジオ番組表では、明日(発行日の翌日)のテレビ番組表が付属している。NHK+鹿児島4局+沖縄3局(RBC・QAB・沖縄テレビ)の、合計9局。これは九州本土以外の離島へ南日を輸送する場合、悪天候などで空輸・船舶が出来ない事態に備えるために用意されたもの。長崎県壱岐対馬五島列島の事例と同じである。

 奄美大島より南側の離島(奄美群島)では、限りなく沖縄県に接することから、場所次第では沖縄3局の民放が受信できる環境にあるため、琉球新報沖縄タイムス等を購読しなくてもいいよう、第2テレビ・ラジオ欄に沖縄3局の番組表も掲載している。また、諸県地域(島津藩の領地)への配慮から、宮崎2局(mrt・UMK)の番組表も載せている。

地域紙

 離島の奄美大島には、南海日日新聞奄美新聞の2紙が出回っており、南日等が空輸で持ち込むという性質上、地域紙を優先的に購読している世帯が多い。奄美新聞は読売新聞のニュースを借りている。

かつて流通していた新聞

鹿児島新報

 1959(昭和34)年に創刊された、鹿児島第2の県紙。元々は南日に在籍していた一部の取材記者や職員が、鹿児島財界(岩崎グループなど)の支援も受けながら発足したもの。1973年に岩崎グループが離脱した後は発行部数が伸び悩み、2004年5月5日付で廃刊となった。過去のバックナンバーは、鹿児島県立図書館で閲覧するしか手立てが無くなっている。

南九州新聞

 鹿児島県鹿屋市に本社を置く新聞社で、鹿屋・志布志といった大隅地方の地域紙(夕刊)を発行していた。2022年12月28日付で完全電子版に移行する形で、実質廃刊。

西日本新聞(鹿児島・宮崎版)

 九州のブロック紙である西日本新聞(福岡市)も、かつては鹿児島向けに発行していたものの、末期は宮崎と一緒くたにされ、足しても2,000部に届かない慢性的な赤字に陥ったことから、2018年3月末で鹿児島・宮崎向けの発行を取りやめている(西スポも巻き添え)。支局そのものは現在でも鹿児島市内にあるものの、基本的には共同通信の記事を借りるため、鹿県の話は皆無である。