そらマメさん鉄道局・流通局

鉄道旅行・新聞の流通考察・雑談がメイン。

2023年の新聞業界を振り返る

 今年の夕刊頒布は、28日の官庁御用納めまで。来年は1月4日から。

 色々とあった新聞配達・供給体制に関する話を振り返ると、やはり下記になるかなと思う。

値上げラッシュ・一部銘柄の廃刊ラッシュ

fuwafuwaame.hatenablog.com

fuwafuwaame.hatenablog.com 極端な円安効果や長期化するウクライナ情勢、更には製紙会社の新聞用紙値上げと生産量削減などが相まって、今年は値上げに踏み切った新聞社が数多く出てしまった。逆説的に考えれば、もしも円安効果やらが起きなければ値上げする必要が無かった(せいぜいページ数調整ぐらいで済んでた)だけに、特に体力がない新聞社にしたら「泣き面に蜂」だった一年だろう

最もタチ悪いのは、ストレート値上げ+ページ数削減どちらもやる新聞社。
高齢者にしたら、そういうのは一番嫌われる。

 ちなみに、一口で「値上げ」と言っても、新聞社ごとに創意工夫を凝らしており、

 といった具合で、ストレート値上げに踏み切った所と、値上げせずにページ数削減・レイアウト調整で保留した所とで大きく分かれた。

 また、値上げ前からも不採算であり、これを機に廃刊に踏み切った所も出現。「一面から三面までホークス!」「福岡のレジャー情報!」をうたっていた西日本スポーツも、晩年はスポンサーがほぼ付かない状態が続き、刷れば刷るほど赤字になる深刻な状況に陥っていたことから、廃刊・完全電子化を決意。最終回では王貞治氏・藤本博史前監督に見守られながら終焉となった。

fuwafuwaame.hatenablog.comfuwafuwaame.hatenablog.com このほか、輸送費の高騰が原因で廃刊に追い込まれた大阪日日新聞もあり、こちらは元々の頒布部数が5,000部程度、それでいて鳥取新日本海新聞社の印刷工場からトラック輸送という非常に不利な状態での配布が続いたため、原油高+材料費高騰でトドメを刺された。

来年の動向

 値上げを保留している新聞社、特にページ数削減でごまかしてる所も、いずれは他紙と同様に購読料改定を迫られるのは避けられない。特に、1年間は値上げを保留すると宣告した読売新聞に関しても部数減に悩まされていることから、折を見て値上げに言及するものとみられる。

 一方で、高齢者のマストアイテムである紙媒体の新聞が一気に需要を落すことは考えにくい。事実、値上げやページ数見直しを実施することで読者離れが起きるのではと不安に思ったが、杞憂に終わっている。今後、極端に経済が不安定になったりしない限り、現行のセット4,900円・統合4,000円台をベースに価格は維持され、しばらくは値上げに踏み切る可能性は低く、安定した購読者の確保が見込める。

 その代わり、少しでも繋ぎ止めをはかるために、徹底した「年寄り・活動家への "忖度"」は大幅に強化されるものとみている。事実、地元紙もスポーツ紙を廃刊にしたことで、それまでの地べたな福岡の話はトークダウンとなり、変わって高齢者が喜びそうな「反権威・反権力」を売りにしたオピニオン路線に舵を切った(安全保障政策・いじめ問題に "活動家" 投入、現地発行されていないはずの沖縄本島における反基地運動に参加etc)。それでいて実売 or 発行部数が減らないあたり、概ね、好評を頂いているのだろう。

 今後考えられる展開として、

【紙面制作】

  • 粘り強く夕刊(またはそれに置き換わるオピニオン新聞)を発行。但し、夕刊製作・取材調査等は全て共同通信社に一任し、最後まで残っている地元紙記者によるコラム等は、全て朝刊に移設。完全な共同通信のコラムのみで構成された、言論のセカンド・オピニオン紙に仕立てる。
  • 地域欄を見直し、福岡県内は地域別の区割りを無くして全て一緒くたにする一方、他県は部数減による発行見直しも視野に、地域情報廃止と、それに置き換わる共同通信のコラムを増強。
  • 社会運動に熱心に励み、事実をねじ曲げてでもイデオロギー重視の紙面を作る。
  • 年寄り・活動家が一方的に満足し、ご機嫌取りに終始する紙面を作る。
  • 嫌いな政治家を攻撃する「座談会」の設置(通信社及び、加盟・契約社全社参加扱い)
  • シルバー民主主義の徹底推進
  • 週一のホークス面を連日掲載に変更し、ついでに全面広告扱いだった公営競技の情報を追加。それを以て、一度は廃刊したスポーツ紙をセッション折りの形で「復活」させる。

【売りさばき】

  • 2024年問題への対応から、他紙を受託している販売店へまとめて配送。
  • 雑誌のCVS撤退を見越し、新聞社系と一部の出版社が発行する定期雑誌の委託配達を推進。
  • 一部の宗教紙に加え、一部の政党機関紙の印刷・配達代行を受託。

 短期的にはこうした紙面改造を随時実施していきながら、余命があまりないシルバー層の繋ぎ止めに終始。一方で、中長期的には新聞業界に加盟している報道機関が、原点回帰として紙の新聞に戻ることを視野に、段階的に電子版と距離を置く姿勢を鮮明にしつつ、過去記事検索等を有料でリース契約、またはサブスクリプション方式で行えるサービス(いわば、県立図書館にある新聞記事検索データベース)への置き換えを検討する必要があろう。

 電子版への移行こそ正義と思われがちな世の中だが、何でも無料で配信・ページビューで広告収入を稼ぐやり方は、読者層の尖鋭化や新聞社の体力をどんどん落すばかりで、長い目で見れば品質を維持した状態でニュースを供給できる状況とは言いがたい。全国の各新聞社も、いつかは本来の原点に戻ることを見越して動いているフシもあるため、今後の動向に注目。

西スポ廃刊後の動向

最も西スポの雰囲気に近いのはスポニチ

 西スポの廃刊後、スポーツニッポン毎日新聞系)は販促強化を理由に、一面をロコツにホークス原理主義的な紙面に合わせることが多くなった。西スポの後継銘柄は日刊スポーツを指定しているが、ニッカンはホークスの試合が敗戦に終わると、一面を変えたり記事の掲載量をワザと減らしたりして、ホークスファンの逆撫を極力回避しがち。

 また、今年からは火曜日のスポニチ筑後ファームの話を週一で掲載されるようになったため、そういった意味では、最も西スポの雰囲気に近いのはスポニチだろう。

 但し、完全なコンパチという訳ではなく、有馬記念などの重大レースや緊急性を伴う話などは東京本社基準に変更される。そういった意味で、長年のホークスファンである私からしてみたら、「まだまだ西スポにはかなわん」。全ての地域で紙面が共通化されている報知新聞・九州スポーツ東スポ)は特に変化なし。

AIとジャーナリズムの両立問題

fuwafuwaame.hatenablog.com 取材・調査業務を行っている記者の視点に立つと、AIは脅威と思う一方で、ちゃんとルール作りをした上でファクトチェックの体制を築ければ、自動執筆で業務の効率化が図れると考える人まで、実に様々だろう。

 私は別に配り手の視点でしかないので、新聞社がどうこう動こうが、きちんと客に銘柄を配達さえ出来ればそれで、の話。ただ、「AIが人類を支配する」という極論は、どうも頂けない。今の見様見真似レベルのAIで寸止めさせとけば、後は発表報道ものはAIに書かせて、編集・校閲係がファクトチェックさえしとけば、取材に掛かる手間を省けるので、多忙な記者も多少は楽になれるじゃん。

「今年の動向」答え合わせ

fuwafuwaame.hatenablog.com 結果発表↓

  • トーチュウの発行見直し:×(但し、本家・名古屋の中日スポーツと完全に紙面を共通化させており、台所事情はあまり良くない)
  • 共同通信社の取材拠点縮小化:×(特に変化なし)
  • 渡邊主筆のAI参戦:×(寧ろ、余計にガンコになりました)
  • オピニオン路線の強化:○(一部銘柄はコスト削減策の一環でそうなりました)
  • ページ数大幅削減:○
  • 朝夕セット体制を頑なに堅持:△(夕刊廃止した所と堅持した所で割れた)
  • テレビ欄廃止:×(但し、毎日新聞に関しては東京本社で紙面制作を行い、紙面の共通化を図ったため、テレビ欄のレイアウトを何度か見直している)
  • 番記者の整理:?
  • 偏った紙面の強化:いつものことですやん……
  • 通販の広告さえ、新聞社どうしで奪い合い:×(ないです)

霊夢 / 編集委員)結構外れたわね。頑なな前例主義の新聞社が早々変わるわけないわよね。

魔理沙 / 論説委員)今年は泣き面に蜂だったが、来年は現状ベースでどこまで維持できるかが鍵を握りそうだな。